アニメ「メトロポリス」雑感
2020年 6月 8日 月曜日
昨晩、何気なく見ていたテレビからアニメ「メトロポリス」が流れてきて、思わず見入ってしまいました。手塚治虫原作、大友克洋脚本、りんたろう監督によるSF映画で、私は映画の存在は知っていたものの、これは初めて観ました。「メトロポリス」と言えばフリッツ・ラング監督によって1927年に公開されたドイツ映画が有名ですが、アニメ作品はその映画とも異なるストーリーでした。私が滞欧中に観たドイツ映画「メトロポリス」のゴシック調の摩天楼やら資本主義と共産主義の対立構造が、SF映画黎明期にしては革新的なものではないかと思ったものでした。とりわけアンドロイドの美しい女性が登場する場面は忘れられません。アニメ「メトロポリス」は、人間とロボットの共生社会の歪が描かれていて、現代社会の抱える問題にもなり得ると思いました。このアニメ全般にある背景の丁寧な描写や色彩が美しく、近代的なメカニックや地下街の混沌とした情景描写は制作者たちの気概を感じさせてくれました。この映画にも人間離れした可憐な女子が登場していました。これは手塚治虫へのリスペクトでしょうか。背景の素晴らしさに比べ、ややストーリーが分かりづらい部分もあり、声優の人選がどうかなぁと思う節もありました。ロボットによって恩恵を受ける人間がいる一方で、働き口を奪われた人もいて、これは私たちのリアルな世界でも訪れる可能性が大きいのではないかと思います。人間の自己中心主義が独占欲や傲慢さを生み、それ故にロボットが犠牲になっていく社会は、ロボットをアニミズムの対象として見ることに限らず、人間同士の中でも起こり得る人権の問題を孕んでいて、ちょっとした恐ろしさを感じました。アニメ「メトロポリス」は名作的要素がありながら、今一つ大衆浸透力に欠けるのは何でしょうか。映画をご覧になれば、分かり難く素っ気ない台詞等で誰でもが抱くであろう疑問があるのも確かだと思いました。
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Tags: ドイツ, 制作, 映画
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