昭和の日は彫刻制作一辺倒

例年ならゴールデンウィークに入り、観光地がごった返しているニュースが流れていますが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全国に緊急事態宣言が出されていて、外出自粛が呼びかけられています。以前私はこの時期に栃木県益子や茨城県笠間の陶器市(陶炎祭)を見に行ったこともありましたが、近ごろは工房に立て籠もっていることが多く、緊急事態宣言がなくても遠出はしていません。ましてや自宅のリフォーム工事が最終局面を迎えている今年は自宅にいるしかない状況です。工房はそんな私に心の癒しと造形への展望を与えてくれる唯一の場所です。心の癒しとしては亡父が残してくれた植木畑に工房が建っているため、毎年春から初夏にかけて新録が美しく、それを眺めているだけで心が安らぐのです。今日は好天に恵まれて青葉若葉が風に揺れていました。気温も寒くもなく暑くもなく絶好の創作活動日和でした。私は朝から工房に篭っていました。新作のテーブル彫刻「発掘~突景~」の陶彫制作に追われていて、成形したものに彫り込み加飾を施していました。じっと陶土を見つめ、鉄の掻き出しベラで彫り込みをし、木のヘラで表面を整えていきました。私はそうしている時が一番幸せを感じている時かも知れず、それが証拠に時間はあっという間に過ぎていくのです。それは単純な作業のようでいて、全体の量感を見ながら彫り込み文様を考えていくもので、機械的な作業ではありません。これはそれほど職人的な技巧を必要としないのですが、全体とのバランスを常に確かめているので、創作的と言えばそうかもしれず、私にとっては多少の緊張を伴った楽しい作業なのです。先日窯入れした陶彫部品3点が焼きあがっていました。何度も書いている通りこの焼成という制作工程が、全工程の中で一番スリリングでエキサイティングです。窯の中は炎神が支配する高温になって、私の手が及ばないところで作品たちは変貌を遂げるのです。石化するという言葉通り、全身に硬質な鎧を纏った姿になって作品たちは帰還してきます。これがあるからこそ私は陶彫をやめられないのです。昭和の日は彫刻制作一辺倒で過ごせる幸福を満喫させていただきました。明日は今月最後の日なので職場に出かけます。

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