C・トムキンズとP・チャンによる導入

「アフタヌーン・インタヴューズ」(マルセル・デュシャン カルヴィン・トムキンズ聞き手 中野勉訳 河出書房新社)は、前衛芸術家マルセル・デュシャンにインタヴューを行なったカルヴィン・トムキンズの記事が中心になった書籍ですが、その導入としてピーター・チャンによる対話が掲載されていました。C・トムキンズがデュシャンに対して、どんな印象を持ったのか、気軽に語っている場面が想像できました。私は先入観でデュシャンは気難しい人ではなかったのかなぁとさえ思っていたところ、彼の自然な振る舞いに拍子抜けするところもありました。本当にデュシャンはどんな人物だったのでしょうか。C・トムキンズが語ったこんな台詞が印象的でした。「一番重要な要素の一つは、全面的に自由であること、というこの状態だと思います。伝統から自由であること、種類を問わず、ドグマというものから自由であることです。それから、絶対に何かを当然視しないという彼のあり方。自分はすべてを疑った、すべてを疑う中で、何か新しいことを思いついた、そういうことを話していました。~略~すべてを、アートの本性そのものまで含めて疑問視しなければというこの必要、この情熱ですね。レディメイドの本当の要点というのは、アートとはこういうものだと定義づけてしまう可能性を否定することだった。アートはどんなものでもありうるんだ。物体でもないし、イメージですらない、ひとつの精神活動なんだ、と。かつ、こういう考え方は彼の仕事に一貫してあるわけです。それまで誰もやったことのなかったいろんなことを彼がやったのは、自分自身のために、ひとつの自由を見つけることができたからだったんですね。」全てにおいて自由になれるというのは、西洋美術の基礎を学んだ者にとっては、易しいようで難しいものなのです。私は彫刻の概念に囚われていて、空間に対して自由な考え方が出来ているとは言えません。そんなことをマルセル・デュシャンから学んで、自分の意識改革ができればいいなぁと思っているところです。

関連する投稿

Comments are closed.