2月RECORDは「灰」

今年のRECORDは色彩を月毎のテーマにしています。今月は「灰」にしました。先月は「白」でやりましたが、今もずっと無彩色が続いています。灰色というイメージは、私にとって決して明るいものではありません。20代の頃、ヨーロッパの古都ウィーンで暮らしていて、大学に在籍している身分でありながら、私は一日のほとんどを散歩に費やしていました。旧市街は灰色の壁が幾重にも重なっていて、その崩れ落ちて煉瓦が覗いていた壁がよく目に映っていました。そこに情緒を感じ取れたのはずっと後になってからで、当時は不安定な心情に苛まれていました。灰色は微妙な心理を反映する複雑な色彩と私は勝手ながら思っています。そのバリエーションは限りなくあって、他の色彩を引き立てる役割もあるかもしれないと思うところです。灰色の古壁に民族風な絨毯が掛かっていて、その色彩のコントラストにハッとしたことも思い出されます。今月のRECORDは灰色だけで表現するというよりは、他の色彩を利用して灰色を際立たせていきたいと思っています。色彩を中心に据えたテーマは、私には新しい試みで、先月もそもそも「白」とは何かを考えながらRECORDを作っていました。色彩の持つ心理的作用や思考をさらに深めたいと思うようになりました。嘗て工業デザインを学びたいと思っていた高校生の頃に、バウハウスの教壇に立っていたヨハネス・イッテンの色彩論を購入しました。今も自宅の書棚に眠っていますが、色彩の三要素や色相、明度、彩度などという基礎的なことは今も知識にあります。今後はさらに一歩進んだ色彩論に触れていきたいと考えるようになりました。

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