週末 美大の卒業制作展へ

雪交じりの雨が降る中、東京都小平市にある武蔵野美術大学に卒業制作展を見に行ってきました。工房に出入りしている若いアーティストの知り合いが、今年同大の彫刻学科を卒業するというので、私の後輩に当たるその卒業生の作品を見てこようという話になったのでした。若いアーティストの他に、工房で美大受験の勉強をしている高校生も連れて行きました。彼女たちを乗せて車で2時間かけて武蔵野美術大学に到着、彫刻の展示場所で卒業制作を出品している人に会うことができました。彼女は楠木に人物を彫り出した作品を3点出していました。その形態の捉えや彫り跡の様子から、かなり精魂傾けて作ったものであることが分かりました。命懸けで卒業制作を行うという美大生らしい気構えが感じられて好感を持ちました。私は40年前の自分の境遇と重ねてしまい、複雑な心境になりました。夢を追いかけていきたいけれど、現実の壁によって打ち砕かれる学生たちが多いことも事実です。他の大学に見られない自己表現に富んだ珠玉の4年間を過ごし、厳しい社会に出ていく美大生のやるせない気持ちを私はよく理解しています。彼女は今となってもまだ就職活動をしていない心情を明かしてくれました。当時の私は早く学校を出て社会人になり、それでも彫刻を続けていかなければ駄目だと師匠に言われて、公務員との二足の草鞋生活を選んだのでした。彼女に限らず多くの卒業生たちがさまざまな思いで卒業制作に向き合ってきたことは、絵画や彫刻、デザイン、建築の作品を見ていて感じることが出来ました。作品の中には伸びしろがある表現が目立つものがあり、このまま制作を継続できたらいいのになぁと思う作品もありました。美大の4年間が人生のピークとなることだけは止めて、目指した自己表現を将来に繋げて欲しいと願いつつ、卒業制作展を後にしました。同伴した2人のスタッフは、美大を出て生活費を他で稼ぎながら自己表現を極めようとしている子、これから美大に入って自分を見つけようとしている子で、私と関わりのあるこの子たちを応援しています。制作場所の確保という大きな環境課題を見つけられた点では、この子たちはラッキーかもしれませんが、世知辛い世の中で生きていくのは、それなりの覚悟も必要でしょう。自分が納得できる人生を送って欲しいと願ってやみません。

関連する投稿

  • 連休② 寒暖差が疲労を誘う 昨日は冬が再来したかのような寒さの中で、朝から工房に篭っていました。ストーブを焚こうか迷うほどでしたが、テーブル彫刻「発掘~曲景~」の柱を彫っているうち、身体が温まってきてちょうどよい具合になりまし […]
  • 週末 久しぶりの木彫制作 暖かい陽射しの中、朝から工房に行っていました。ロフト拡張工事に伴って配線工事が入り、朝9時から夕方まで業者が出入りしていました。私はテーブル彫刻に設合する陶彫部品を作り始めるため、大き目のタタラを複 […]
  • 週末 AM陶彫 PM木彫の制作 今日は朝9時に工房に行きました。電気工事の業者が昨日に引き続きやってきていました。私は午前中は陶彫成形に集中していました。昨日タタラを作っておいたので、いつものようにタタラと紐作りの併用で、円形の陶 […]
  • 週末 梱包開始&美術館散策 今日から個展のための梱包作業に入ります。まず「発掘~座景~」の4枚の台座をシートに包みました。シートの内側にはエアキャップをガムテープで貼り付けています。台座に施した砂マチエールが痛まないように作品 […]
  • 週末 目標に届かなかった陶彫成形 8月の週末が今日で終わります。今月の制作目標とした新作の陶彫部品6点の成形は終わりませんでした。6点の陶彫はテーブル彫刻の床に置く大きめの部品で、今月は成形が2点だけ終わりました。土錬機の不具合があ […]

Comments are closed.