映画「シュヴァルの理想宮」雑感

先日、横浜市中区にあるミニシアターに「シュヴァルの理想宮」を観に行きました。私自身は深い感銘を受けて、主人公が後半生を費やした宮殿作りのことが頭から離れずにいます。人は何を生きがいにしていくのか、この映画は武骨で不器用な主人公が生涯をかけて幸福を掴んだ話として私は理解しています。図録に「ひたすら頑固に信念を貫く夫と周囲の人々との間に生じる軋轢の中で、それでも彼を見放さず生涯にわたってそばで見守り支えた妻」という一文がありました。主人公のみならず、その妻の夫への接し方にも私は感銘を受けました。また主演インタビューの中に「彼は無欲で、誰かを魅了するためでもなく、そして一瞬たりとも疑いを持つこともなく、長い間宮殿の建設に身を捧げたんです。」というコトバもありました。これは映画として見れば、愛娘のために、そして妻に支えられ、郵便配達員をしながら、たった一人で巨大な宮殿を作り上げた男の家族愛の物語になるわけですが、昨日もNOTE(ブログ)に書いた通り、シュヴァルの創作活動への情熱はどこからくるのか、私の頭を離れない理由はそこにあります。作り上げた結果より、苦しみながら作っていく制作過程において、彼は幸福だったのではないかと私は思うところですが、いかがでしょうか。最後に現在フランスの観光スポットになっている「シュヴァルの理想宮」についてのインフォメーションを掲載しておきます。「シュヴァルの理想宮は、郵便配達員のジョセフ=フェルディナン・シュヴァル(1836-1924)がたった一人で石を拾い集め、すべて手作業で築き上げた、フランス南東部ドローム県のオートリーヴ村に現存する理想宮。1879年から1912年の33年間、9万3000時間を費やし完成した。スケールは東西26m、北14m、南12m、高さ8~10m。古今東西の様々な建築様式やモチーフが混在し、雑誌や絵葉書を情報源に空想癖の強いシュヴァルが思い描いた夢想が表現されている。」理想宮は芸術家ピカソやシュルレアリスムの旗手ブルトンらが高い評価をしたようで、2017年の調査では年間17万5000人が訪れているそうです。P・コンスタンという専属の修復家もいて、彼はまるでシュヴァルのような人物だと図録にありました。一度は訪れてみたい造形建造物かなぁと思っています。

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