アフリカ芸術との出会い

横浜美術館で開催中の「ルノアールとパリに恋した12人の画家たち」展の図録の中で、20世紀初頭のパリに集った芸術家たちが、アフリカ芸術に感銘を受けて、自らの表現の中にプリミティヴな生命を宿した造形を取り入れたことが書かれていました。私も近代西洋美術史の中で、当時の画家や彫刻家を通してアフリカ芸術に触れ、その生命力の強さに惹かれてしまったのでした。私は日本にあるアフリカ系の雑貨店に時々立ち寄り、気に入った仮面等を購入して自宅の壁に掛けて楽しんでいます。そのうち工房にも仮面コーナーを作ろうと思っています。素朴で呪術的な造形が前衛芸術を牽引することになった動機は何か、図録から紐解いてみたいと思います。「19世紀半ば以降のヨーロッパでは、アフリカの植民地化が進むにつれて、同地に関する調査研究も進展した。~略~まずは民族誌的な資料として受容されたアフリカの器物であるが、やがて前衛芸術家たちがその美的価値を見出し、芸術としての側面を発見していく。~略~ピカソが《アヴィニヨンの娘たち》の制作に先立つ数か月前、すなわち1907年6月頃に、トロカデロ民族誌博物館でアフリカやオセアニア美術から啓示を受けたことはよく知られる。」(片多祐子著)そうしたことの動機となるコトバがフランスの美術評論家によって語られています。「われわれは公的なサロンの出品作にはうんざりしている。何か違うものを求めているのだが、それが何であるか確信は持てない。~略~この種の刺激を求めてわれわれはニグロ彫刻を、その迫真性、独創性、生命力といった質ゆえに称賛するようになった。」(アンドレ・ワルノー)画商ギヨームは非西洋の持つ力に共鳴して芸術家たちの橋渡しをやっていたのでした。「ポール・ギヨームの1910年代の活動を振り返ると、そこには、同時代の美術を擁護した姿だけでなく、ハイアートとしての絵画とサブカルチャーとしての〈ニグロ芸術〉の混淆を標榜し、時代を先駆けた文化の発信者としての姿も立ちあらわれる。彼にとっての〈ニグロ〉は、アフリカやオセアニアのオブジェという存在を超えて、『時代の精神』であり『新たな美学』であり、一つの思想であった。~略~モダンアートと〈ニグロ芸術〉は、相互に補完し合いながら、アンドレ・ブルトンが『最も早く近代の啓示を受けた者のひとり』として賞賛した、ポール・ギヨームの先見の明を物語っている。」(片多祐子著)

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