映画「ヒューマン・フロー」雑感

現代社会の問題をいきなり突き付けられたような刺激的なドキュメンタリー映画を観ました。タイトルは「ヒューマン・フロー 大地漂流」。現代美術家であり社会評論にも通じた中国人アイ・ウェイウェイの監督したもので、地球規模で難民を扱っている壮大なものでした。貧困・戦争・宗教・環境などで増え続ける難民たち。昨年は6850万人に上り、増々深刻化していますが、難民の受け入れを拒む国も増えているのです。本作の導入では難民たちが辿り着いたギリシャの海岸から始まり、流離うシリア難民、ガザに封鎖されるパレスチナ人、ロヒンギャの流入が止まらないバングラデシュ、ドイツの空港跡を使った難民施設や、広大な土地に広がる難民テントの群れ、アメリカとメキシコの国境地帯など、ドローンによる空撮やスマホによるリアルな映像が本作のほとんどを占めていて、それだけでも人々が生きていく切羽詰った日常が切り取られていました。図録にこんな文章がありました。「アンデルセン(編集者)は、人間として最も基本的といえる、生きることについて、そして家族への愛情に焦点を当てたと話す。『こういった映画は、とても簡単に感傷的なものになってしまう。映画のなかで、難民たちを被害者としてカメラに収めることだけは避けたかった。私とアイ(監督)は、そのような安っぽい同情を越えて、同じ人間として彼らを認識してもらいたかったのです。人々が作りだす大きな流れを、歴史の一部、そして世界の一部として映し出すのと同時に、《どんな世界を求めるのか》と問いかけてきます。これはとても感動的なことです。』」監督をしたアイ・ウェイウェイの言葉から拾ってみます。「私は生まれて間もない頃に、父が反共産党として国を追放されました。家族全員で人里離れた場所へ強制的に送られ、すべてを諦めねばなりませんでした。私は人間に対する最悪の仕打ちである、差別、虐待を見て育ったのです。~略~難民たちが私たちとなんら変わらない人々であるということを知ってもらうために、努力しなければいけないと感じています。難民はテロリストではなく、そういう考えがテロリスト的なのです。彼らは普通の人間に過ぎず、痛み、喜び、安心感や正義感は私たちのものと全く変わりません。」国を追われたアイ・ウェイウェイだからこそ難民に着目し、撮影できた作品とも言えると私は思いました。私たち日本人も外国籍の人々と接する機会が増えてきました。観光客と違い、生活者である彼らとは、風習や文化の違いによる衝突も多少ありますが、お互いが心地よい関係になれるように努力することは必要だと感じています。漂流した先で漸く辿り着いた日本に愛着を持ってくれたら、地域住民としてこれほど嬉しいことはありません。

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