「技術の中の形」について

「ヨーロッパの形 螺旋の文化史」(篠田知和基著 八坂書房)の第四部「技術の中の形」についてのまとめを行います。まず、冒頭の文章を引用いたします。「技術の基本は車であり、ヨーロッパはすでに述べたとおり、基本的に車両文化である。しかしその車輪も単に定位置で回転するだけではなく、プロペラであれば空へ舞い上がり、工作機械であれば複雑な8の字を描きながらネジや歯車をつくっていく。」何かモノを作るなら回転させることに注目したヨーロッパ人の発明は、他の文明より先んじて発達した要因になりました。「(ネジとしての螺旋は)より少ない力で圧迫力を加えて、ものを接着しているのである。叩き込むかわりにねじ込んでいるが、これは逆に回せばはずれるので、叩き込んだ場合ははずすには壊す以外にないのに比べればずっとましである。」ヨーロッパではネジの他にバネの発明もありました。「バネの機能はショックの緩衡か、ドアの自動開閉、物体の発射などだろう。」こうした道具類を駆使して運搬のために車や船や飛行機を発明した人々は、やがて時刻や長さを測ることにも拘り、時間や空間の概念を見つけていきました。それは哲学であり、数学であり、古代から近代に到るまで人類史を牽引する文化や伝統を作ることになりました。「ローマ人にとって『時間』とは円い文字盤の上でくるくると回転する針の動きだった。以来、二千年のあいだ、ヨーロッパ人はそのような円環型の時間認識を持っていた。~略~はかることは、デジタルでは数値化することであり、アナログでは円盤状の針の角度であらわすことである。長さのようにはじめから数値化されて認識されるものはともかく、速さ、あるいは圧力、さらに強さであっても、そのままでは数値であらわされえないものもヨーロッパでは度量衡に準じて計測し、数値であらわしたのである。」この進歩こそが現代の私たちの生活を作っている基盤だと言えるでしょう。現代社会ではヨーロッパはEU諸国として、世界のひとつの地域になっていますが、人類史を紐解けば、文明発達において多大な貢献をしたことになります。私がやっている造形美術でも、つい最近まで先輩たちが挙ってヨーロッパに出かけ、その文化を摂取してきていたのでした。日本美術の概念はヨーロッパなしには語れないほどです。本書を読むと改めてヨーロッパの存在の大きさに気づかされます。

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