映画「田園の守り人たち」雑感

東京神保町にある岩波ホールを、私は今に至るまで幾度訪れたことでしょう。最近は横浜のミニシアターに通うことが多くなりましたが、岩波ホールで上映された映画は鮮やかに記憶に留めています。フランス映画「田園の守り人たち」は岩波ホールのネットで知り、最終上映時間に合わせて横浜からやってきたのでした。私はミレーの絵画のような美しい田園風景を味わいたかったのですが、これは戦闘シーンが少なくても歴然とした戦争映画で、第一次世界大戦下のフランスの田園に生きた人々の暮らしぶりと、戦争に駆り出された男たちや銃後で生活を支えた女たちのリアルな日常を描いていました。図録に物語そのものの描写があったので引用いたします。「戦場に向かう若者、農園には母が残され、妻が残され、年老いた男が残される。女たちは種を蒔き、畑を耕し、乳を搾り、家畜に餌をやる。いつ戦場から恐れている知らせがくるかもしれない不安はみじんも見せず、男たちの帰還を心待ちにしながらも感情を押し殺し、女たちはただひたすら農作業を続ける。彼女たちが感情を露わにするのは、まるで悪魔の訪れのようにやってくる突然の訃報に慟哭する時だけだ。だが、日常は続く。」(斉藤綾子著)この映画で柱となっているのは田園の守り人たる母親で、彼女の息子や娘を見る物憂げな眼差しに私は惹かれていきました。そこに絡んでくるのは雇われた若い女で、最終的に田園から離れられない母とは別の生き方を彼女はしていくことになります。図録よりその個所を引用すると、「オルタンス(母)が男は決めたしきたりや約束を守ろうとする過去に生きる女とすれば、ソランジュ(娘)が現在、そしてフランシーヌ(雇われ人)は自立を欲する未来の女性を鮮やかに描き出す。」とありました。農業器具にも時代の移り変わりを感じさせる場面があり、また人の生き方にも現代に通じるものが伺える映画でした。

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