六本木の「ウィーン・モダン」展

今年は日本とオーストリア交流150周年にあたる記念すべき年で、とりわけクリムトを初めとする大掛かりな美術展が開かれています。私は先月、東京都美術館で開催されていた「クリムト展」に行ったばかりだったのですが、先日は六本木の国立新美術館で開催されていた「ウィーン・モダン」展にも足を運びました。「ウィーン・モダン」展は18世紀の啓蒙主義時代からビーダーマイアーの時代への変遷をたどる総括的な歴史を垣間見せる展示がありました。そうした時代を経て、ウィーンの外壁が取り壊され、そこに大通り(リンク)が完備され、近代都市へ生まれ変わるウィーンの姿が映し出されていました。「クリムト、シーレ 世紀末への道」と本展の副題にありましたが、ウィーンはいきなり近代化が行われたわけではなく、時代的必然があって、皇帝文化から市民文化へ社会が進んでいく過程で新しい価値観が芽生えていったように思います。それでも図録にある通り「都市の開発は50年以上におよび、第一次世界大戦が勃発する直前になっても完成していなかった。~略~建築家が目指したのは、歴史的な形式だったのである。~略~歴史主義建築の仰々しい発展性とその限界とを、一度に、これほどわかりやすく白日の下にさらけ出してみせた場所は、ほかにはないだろう。そればかりかリンク通りは、オットー・ヴァーグナーやアドルフ・ロースに代表される機能主義的な新しい建築の基礎をつくりだし、歴史主義の束縛からの開放をもたらすことにもなった。」とあるのはどういうことなのでしょうか。懐古趣味的な建築に対するアンチテーゼとして、新しい美観が登場したということでしょうか。若い頃に5年間をウィーンに暮らした自分には、疑似古典主義の建造物とシャープな近代的建造物が共存するウィーンの街は、それだけ刺激的で楽しい場所でした。時代が変わっても建築や美術工芸や音楽は、新旧どちらにしてもあらゆるものが西欧的な捉えであって、東洋からきた自分にはそれら全てが異国情緒に思えたものでした。美術作品については稿を改めます。

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