恩師からの手紙より抄
2019年 7月 24日 水曜日
個展を見に来られた人の中で、文筆業をやっていらっしゃる方がいます。彼は書籍を何冊か出版されていますが、私にとっては恩師とも思える人です。時間が合えば貴重なお話を伺えるのですが、今回は私がいない時間に来廊されたようで、芳名帳に名前がありました。数日後にお手紙をいただいて感謝に耐えません。ご高齢にも関わらず横浜から東京銀座まで足を運んでいただいて恐縮しておりますが、先生の思考の冴えは相変わらずで、心より驚嘆いたしております。昨年はゴーギャンの大作「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」に託けて、私の作品を論じてくれました。今年は図録に掲載した「重層空間」の考え方を私の作品に投影して、お言葉を頂きました。「貴君の提示された『重層』という意識は、結果でしょうか、それとも過程でしょうか。後者の方に思え、その視点でみると、今回の作品はしっかりと大地に根を張った大樹のイメージが浮かんできます。『発掘』はその原点を求めて努力する真摯な姿勢の瞬時の自己認識でしょうか。人間とは…、何処から…、と言った宿命的な命題に迫る重い活動。ゴーギャンがタヒチに求めたノアノアの精神にも通じるような取り組みと受けとめました。これに気づくと、作品を形作る硬質な物体が、親しみ易い柔軟性を帯びてきました。静的なものの中に動的な暖かさが開花するようでした。つまり、重層柔構造の世界がみごとに構築されていると思いました。老妄虚言にて御容赦。」凄いお言葉を頂いて、暫し呆然としましたが、多大な励ましと感じて、力が湧いてきました。とりわけ私は「作品を形作る硬質な物体が、親しみ易い柔軟性を帯びてきました。静的なものの中に動的な暖かさが開花するようでした。」というくだりが大好きで、この一文を他にも使わせていただこうと思っています。
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Tags: コトバ, 作品, 個展
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