虎ノ門の「加守田章二の陶芸」展

昨日で終了してしまった展覧会の感想をここで記すのは、かなり気が引けますが、陶芸家加守田章二はあちらこちらで展覧会をやっているので、作品を目にする機会の多い陶芸家ではないかと思います。そんなことを踏まえて、敢えて感想を述べさせていただきます。展覧会場は東京虎ノ門にある菊池寛美記念 智美術館で、陶芸を専門に扱っている美術館らしく、小さな陶器には見やすい展示台があって、じっくり鑑賞することが出来ました。加守田章二は49歳で亡くなった夭折の陶芸家です。私は栃木県益子でその作品に触れ、衝撃を受けました。それは曲線彫文が施された壺や皿で、還元や炭化焼成で焼き締められていました。加守田は、窯の中の酸素を少なくして高温焼成し、冷却時も還元状態にして土を締める方法によって、陶土そのものの表情を提示する、野性味に溢れた作品を作っています。そこに曲線彫文があるだけで、単なる器だけでなく、加守田ワールドはいろいろな世界が想起されるオブジェになっていました。図録にこんな一文がありました。「『曲線彫文』の文様を生み出すにあたり、加守田が何に想を得たのかについては諸説あり、遠野で目にした鳥居の木目に想を得ているという昌子夫人の証言の他、遠野に吹く風が砂上につくる風紋や仏教美術からの影響なども指摘される。」さらに加守田本人のメモが図録に掲載されていて、私はこれも記憶に留めることにしました。「私は陶器が大好きです しかし私の仕事は陶器の本道から完全にはずれています 私の仕事は陶器を作るのではなく 陶器を利用しているのです 私の作品は外見は陶器の形をしていますが中身は別のものです これが私の仕事の方向であり 又私の陶芸個人作家観です」陶芸家加守田章二の作品は、器というより陶彫に近いものを私は感じ取っています。展覧会のタイトルに「野蛮と洗練」とありましたが、縄文土器の風情を保ちながら、モダンで近未来的な造形を感じるのは私だけではないと思います。若くして亡くなったことが惜しまれる陶芸家でした。

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