「衣食住の形」について②
2019年 7月 17日 水曜日
昨日に続いて、通勤中に読んでいる「ヨーロッパの形 螺旋の文化史」(篠田知和基著 八坂書房)の第三部「衣食住の形」の後半のまとめを行います。この単元では食文化と住まいの形について取上げます。まず食文化では典型的なパスタを例に取ります。「ヨーロッパの汁物はだいたい、よく掻き回す。パスタの場合は十分に掻き回さないとパスタ同士がくっついてしまう。そしてそれを食べるときはスパゲティならフォークにくるくると巻きとって食べる。この『回す』作法は日本料理でやったら嫌がられる。『回す』というしぐさと『食べる』ことのあいだに距離がある文化と距離のない文化の差である。~略~ねじりドーナッツ、ひねりパスタなどから、マヨネーズの混ぜ方にまで及んだが、実はヨーロッパでは穀物生産とその加工でも『回す』ことが重要なのである。麦を刈り取るときは大鎌を腰にあてて回転させて刈る。直系2メートルから3メートルの円状の面積の麦が鎌の1回転で刈り取られる。」食文化はここまでにして、住まいの形に進みます。「ロータリー方式の都市は、本来、領主が城館がロータリーの中にあって、そこから放射線状に街路が出ていて、領主が城の天主へ上がれば、領内の動静が一挙に見渡せる構造だったが、円形の刑務所があって、中央広場にあたるところに望楼があって、ぐるりに円形に配置された部屋を見渡すようになっているものもある。劇場とは別の発想だが、管理のための円形構造なのである。~略~そもそも人が集まって形成した形が円形競技場であれ、円形劇場であれ、円いと同時に階段式で、立体的だったのである。広場がそもそも階段だった。ギリシャの場合には日本と同じく土地が狭く、人が集まる広場でも水平面を大きく取ることが難しかったという事情はあるだろう。しかしそれでも、擂り鉢状の広場に人々が集まって議論をかわすのが、ギリシャの、そしてヨーロッパの民主主義の形だったのである。」私はヨーロッパに住み、20代の頃に憧れた異文化は、螺旋形や渦巻きとともに脳裏に刷り込まれたのではないかと振り返っています。最後にまとめとなる文章を引用いたします。「衣食住の形をもってヨーロッパの形を求めると、頭上に渦を巻くかつら、食卓に重ねられるねじりパンや螺旋形の栓抜き、そしてベッドのコイルスプリングから始まってヨーロッパの家屋の構造を決定する螺旋階段まで、終始一貫して螺旋という形が存在するといえる。直線より曲線、ロココや世紀末の唐草模様、それが集約されて天へ昇る螺旋の形になるのである。」