「衣食住の形」について①

通勤中に読んでいる「ヨーロッパの形 螺旋の文化史」(篠田知和基著 八坂書房)の第三部「衣食住の形」の前半のまとめを行います。テーマが衣食住のためか、本書の中では一番ボリュームのある単元なので2回に分けます。冒頭の文章から引用していきます。「人間という動物は単に食べて寝るだけのものではなく、政治、法律、軍事などにおいて特有の形を形成しながら発展してきたものだというなら、制度や発想法の形を考えなければならないともいえるのである。しかし、それはまた、何らかの形で衣食住にあらわれているのだという考えもあり、住まいにしても着るものにしても、自然条件に対する保護の装置としてだけではなく、敵から体や財産を守る軍事的な機能を持った装置としての意味も無視できないともいえるのである。」勿論政治面だけではなく、時代の世相や流行にも衣食住が反映されることもあります。次に衣装に関する文章で、気に留まった箇所を書き出します。「一概にヨーロッパ人といっても色々だが、おおむね金髪でも栗色でもやわらかく細い髪が軽くウエーヴをしている人が多い。そのウエーヴを鏝で強調してくるくると巻いて顔の両面にたらす形が19世紀中頃にフランスで流行したが、日本の平安時代の宮廷の女房たちが長い黒髪をまっすぐに伸ばして床に垂れるくらいにしていたものと比べると、ヨーロッパ女性の髪型は昔から巻き髪で、螺旋形にするか、でなければ、三つ編みにして、それを頭の周りに巻くことが多かった。」これは髪型に関する文章ですが、衣装に関する製造工程に触れた文章にも興味を持ちました。「糸つむぎをするのに、つむぎ竿に羊毛をからげ、そこから引き出した糸を紡錘を回しながら、巻き取ってゆくという作業、そのプロセスの一部、あるいはそのあとのプロセスとしてつむぎ車を使うこと、そしてその車の形状、それらは別にどうということもなく、羊毛と木綿の違いもさして影響せず、かなりな地方で同じようにおこなわれ、どこでも女性の仕事とされてきたことはその通りなのだが、それを絵にしてみると、羊毛をぐるぐるとからげて、螺旋形にしたものを片手に持ち、もう一方の手で紡錘をくるくると回しているヨーロッパの農家の女たちの姿は確かに『ヨーロッパの形』をあらわしているように思われる。」後半は食文化と住まいの形を扱います。

関連する投稿

  • 「中空の彫刻」読後感 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]
  • 「《逸楽の家》」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第6章 タヒチからマルケーサスへ(1895~1903年)」の「3 […]
  • 「結語」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「結語」の「1 木彫と陶器」「2 親密な環境における彫刻」「3 […]
  • 「状況-思考の神秘的内部を表すこと」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第6章 タヒチからマルケーサスへ(1895~1903年)」の「1 […]
  • 「文化的総合」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第6章 タヒチからマルケーサスへ(1895~1903年)」の「2 […]

Comments are closed.