鑑賞が与えてくれるもの

創作活動は技術と思索が基盤にあります。技術はイメージしたものに対し、素材を選び、その巧みな技を取得し、自分が思うようなイメージを具現化することです。技術ばかりに走ると、小手先の造形になってしまい、鑑賞する人の心に響いてくることはありません。数多くの展覧会に足を運ぶと、そうした作品を目にすることがあります。逆に技術が覚束なく、それでもイメージに近づけようと奮闘している作品に、作家の魂を感じることもあります。そんな作品に出合うと見に来てよかったと感じるのは私だけではないと思います。思索は、そもそも自分は何をしたいのか、造形という媒体を使って何を表現しようとしているのかを、自問自答する契機になるものです。思索は視覚表現だけに限らず、他の表現分野でも根底に流れるコンセプトであったり、哲学であったりして、創作そのものの問いかけを発する基本的な考え方でもあります。そうした創作活動を展開する上で、さまざまな芸術作品を鑑賞することは、思索を深める良い機会にもなります。たとえば美術の展覧会を取り上げると、展覧会場で私は作家の背景やらキャリアには囚われず、まず作品を見て、素直に感じ取ろうとしています。私は解説が流れる音声ガイドは借りません。作品に対する自問自答を妨げると思っているからです。おぉ、いいなぁと感じられればそれで満足なのです。鑑賞には訓練が必要だとも私は考えます。私が評価したのはどうしてなのか、何が良かったのか、私は自分自身でその答えを探り当てていきます。それが出来るか否かは、鑑賞する場を多く経験しなければ考えをまとめることが出来ないと私は思っています。作家の背景や時代考察などの解説は、鑑賞した後の裏付けとして図録によって確認していきます。NOTE(ブログ)には、展覧会に行った時の新鮮な思い、つまりファーストコンタクトに対する感想をまずアップし、次の機会に図録を読み込んで自らの考えとともに知り得た情報をアップしています。鑑賞が与えてくれるもの、それは自分にとって多くの学びであり、楽しみでもあるのです。

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