映画「クリムト」雑感

先日、常連にしている横浜のミニシアターに映画「クリムト」を観に行ってきました。正式なタイトルは「クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代」となっていて、グスタフ・クリムトだけではなく、その時代背景や同時代を生きた芸術家を巡るドキュメンタリーになっていました。折しも東京都美術館や国立新美術館では日本オーストリア友好150周年記念として、クリムトを中心とする大きな企画展が開催されていて、私も東京都美術館の「クリムト展」を先月見てきました。映画では旧態依然としたウィーンの芸術界に新しい風を吹き込んだウィーン分離派をクローズアップしていて、その面白さを若い頃にウィーンで堪能してきた私には、あっという間に過ぎた上映時間という感じを持ちました。ウィーンは疑似古典様式の建造物が街の中心を飾っていて、20代前半でウィーンに暮らし始めた私には、西欧の歴史を感じさせる重厚な建造物群に圧倒されていました。そうした環境の中でクリムトやシーレの作品は、エロスやタナトスを描いていていたため、当時は物議を醸したであろうことは想像に難くないところです。S・フロイトの精神分析学もここで誕生しています。O・ワーグナーの合理的な近代建築やG・マーラーの音楽など、時代が変わっていく状況が準備されていたおかげで、近代都市ウィーンは現在の私たちにとって大変魅惑的な都市に生まれ変わりました。ここでクリムトとシーレについての論評を図録より引用いたします。「クリムトは人であれ、自然であれ、美しいものへの憧れを語った耽美主義の人であり、装飾的な美しさによって美の王国を築き、そこに安住の地を見出した世紀末のデイ・ドリーマーであった。クリムトの生涯の半分の28年の短い生涯を、奇しくもクリムトと同じ1918年(これは第一次大戦終焉の年でもあった)に終えたシーレは、快楽よりも苦痛に、外面よりも内面に、安らぎよりも不安に人生の真実を見た画家であった。」(千足伸行著)シーレの絵画はクリムトのそれより現代に近づいているように感じるのは私だけではないと思います。

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