「形の文化史」について

通勤中に読んでいる「ヨーロッパの形 螺旋の文化史」(篠田知和基著 八坂書房)の第一部「形の文化史」のまとめを行います。冒頭に「スクリュー、プロペラに至る渦巻きがヨーロッパの機械文明の基本で、そこからヨーロッパ文化を支配する形が形成された。」とありました。まさにギリシャ・ローマから始まる建造物を見ると円形や渦巻きを基盤とした変遷が分かります。「一般にギリシャの神殿の美は列柱の微妙なふくらみ、エンタシスにあるとされ、東大寺の柱にもその影響が見られるという。そして円柱の太さ、高さ、間隔などの比例にヨーロッパの古典的な美があるとされていたが、それにならってつくられたローマの古典様式の教会のファサードはどちらかというと単調である。その単調な円柱の列のかわりに、ベルリーニはダイナミックなひねりを柱に加え、『ソロモン柱』にした。ギリシャ・ローマの古典様式ではなく、イスラエルの古典様式と称するものをもってきたところに、彼の意気込みがあるのだろう。まっすぐな円柱がギリシャの古典美なら、キリスト教古代の美は螺旋だと言いたいのである。」また劇場や議会にも円形が登場します。「人が集まって町をつくり、市場をつくり、さらには議会を構成したとするなら、アゴラがそれであり、古代劇場であり、コロッシウムであろう。ギリシャ、ローマの古代劇場、競技場、あるいは集会場はいずれもアンフィシアター、すなわち円形の階段教室の形をとっており、円形の舞台、演説場、競技場をすり鉢形の座席が同心円状に取り巻いているのである。これは現在の欧州議会やフランスやドイツの国会も同じである。」私は若い頃、ヨーロッパで学生生活を送っていたので、確かにすり鉢形の教室が身近だったと思い返しています。さて、ヨーロッパとはどこからどこまでを言うのでしょうか。EU加盟国だけなのでしょうか。「神話や言語、文字などの文化はメソポタミアやシリア、フェニキアからヨーロッパに広まった。これとキリスト教に代表されるヘブライ文化をも現在のヨーロッパの根幹であるとするなら、広義のヨーロッパはインドからオリエントをへて、地中海の北岸へ至っているのである。」それではヨーロッパ文化とは究極何を指すのでしょうか。「ヨーロッパにいかなる文化があったのかといえば、まさに科学技術であり、ルネサンスの三大発明などすべて中国から伝わったとされるものの、それを産業に応用したのはヨーロッパだった。」論考はさらに音楽や美術、文芸などの細かい箇所に触れ、さらに文化そのもののシステムまで及んでいましたが、今日はこのくらいにしておきます。

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