若林奮「犬」による彫刻

平塚市美術館で開催中の「彫刻とデッサン展」に出品している彫刻家のうち、私の興味関心が高い2人目は若林奮先生です。この人も大学の教壇に立っていましたが、当時から若林先生の説明が難解すぎて、学生の私は到底近づくことが出来ないと思っていました。若林先生の展覧会には全て足を運ぶものの、今も作品に内包される思索が分かっているとは言えません。この人は何がしたかったんだろうと思いを巡らすことが屡々あります。今回の展示作品も全て理解できたわけではないのですが、何故か不思議な魅力があって、惹きつけられてしまうのです。本展には作家の飼い犬をモチーフにした彫刻やデッサンが数多く出品されていました。「泳ぐ犬」や「雰囲気」など、私はいろいろな美術館で展示されてきた同じ作品を見てきました。独特な彫刻観がこの作家の特徴であることは間違いありません。「自分の家で飼っていた犬を観察しながら、その犬に見せる彫刻をつくることを計画し、最終的には彫刻が自分と犬の間にあり、それぞれに向いた半面が、自分と犬に所属していると考えるようになった。」というのが図録に掲載されていた作者の一文です。犬に見せる彫刻、これはまたどのようなモノなのでしょうか。またデッサンにおいても、先生は独特な感覚をもって制作されていたようです。「『表現法や形式は絵画のふりをしているようなものも、ほとんど物質の話の中に収まるもののように思える。あるいは彫刻の一つの形状ー薄い彫刻ーと言うんでしょうか。…そういうところに多分入れてよいんではないかと自分では思っています。』奥行きのある、物質性の強い彫刻の対極に、奥行きのない、物質性のほとんどない薄い彫刻としてドローイングを位置づけている。~略~若林は絵具やインクを紙にしみこませ、『紙の厚さを彩色する』ことを試みる。」(江尻潔著)デッサンも薄い彫刻とした発想に、普段から物質を相手にしている私も頷いてしまうのですが、世の中に平面は存在しないという存在の原則論に立てば、これも納得してしまう論理ではあります。

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