佐倉の「ジョセフ・コーネル」展

大型連休を利用して千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館に「ジョセフ・コーネル コラージュ&モンタージュ」展を見に行ってきました。DIC川村記念美術館にはアメリカの造形作家ジョセフ・コーネルの作品コレクションがあって常設展示されています。コーネルの世界に惹かれている私は、別の展覧会の時にもコーネルの作品を必ず見ていました。私はコーネル関連の書籍はほとんど読んでいるので、それだけで作家を身近に感じてしまうのです。私はアメリカに行ったこともなく、生前のご本人にお会いしたこともないのにも関わらず、コーネルが家族と共に住んだ自宅兼用ガレージで箱の作品を制作している姿を勝手に思い浮かべていました。コーネルの作る箱は内部に既存のモノが配置されていて、詩的な情緒もさることながら、作家の謎めいた思索を紐解いていきたい願望に駆られます。一見分かり難い世界を前にして、あれこれ自分なりに解釈するのが密かな私の楽しみになっているのです。飛び立つ鳥を封じ込める鳥籠や過ぎた時間を瞬時に切り取ったようなホテルの片隅に、そのミニチュアを作った作家の思いが交差しているように感じています。今回の展覧会ではコラージュ&モンタージュという創作技法がタイトルにありました。コラージュとは、仏語で糊付けという意味があり、雑誌の切り抜き等の素材を組み合わせる技法のことで、シュルリアリストの常套手段です。平面に斬新な並置を試みて非現実的な世界を作り出します。またモンタージュとは、映画用語で視点の異なる複数のカットを組み合わせる技法です。コーネルは映画が好きだったらしく、映画フィルムの断片をコラージュした作品がありました。映像作家の協力を得て、実験映画も作っていました。私はコーネルによる映像を今回初めて観ました。映像も含めて50点が展示された空間に接して、横浜から車を飛ばしてわざわざ千葉県佐倉まで来た甲斐があったなぁと思いました。

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