「コンポジション」について

前の職場から現在の職場に持ってきて、休憩中に読んでいる書籍があります。これを鞄に携帯していないのは、フランスの現象学者による至極難解な絵画論であるため、じっくり落ち着いて読んだ方がよいと思っているからです。読み始めてから時間も随分かかっていますが、大好きな画家カンディンスキーに纏わる論考ゆえに、決して飽きることもなく、思い出したように机の引き出しから引っ張り出しているのです。「見えないものを見る カンディンスキー論」(ミシェル・アンリ著 青木研二訳 法政大学出版局)は、カンディンスキーの著書「芸術における精神的なもの」を拠り所にして濃密な論理が展開していきます。「コンポジション」はどうやら全体論の佳境を迎えたらしく、本書の真髄とするものが見えてきました。フォルムについて論じている箇所を取上げます。「フォルムひとつひとつの情念こそがフォルムに正当性を与え、フォルムを生み出し、まずもってそういう産出の力を呼び起こすのである。われわれがこの情念と同一であるかぎりにおいて、われわれはそうしたフォルムを欲し、つくりあげ、フォルムとともにその異常な増殖や収縮を、その均衡や過剰さを、そのこの上ない華麗さを享受するのである。~略~そのフォルムは〈内的必然性〉によって誘発されたものであるという条件がつく。すべてのフォルムは適切であり、それ自体として根拠を与えられている。つまりフォルムの表現の源になっている情念によって。」次にコンポジションとフォルムの関わりについて引用いたします。「コンポジションとは、自らの固有の色調を作品全体へと広げて行くひとつの主要なフォルムに、あらゆるフォルムを従属させることである。」とありました。最後に絵画における大きな対位法が述べられていて、これはカンディンスキーの著作からの引用になっているようですが、ちょっと長めの文章を掲載しておきます。「個々のフォルムの柔軟性、いわゆるフォルム内部の有機的な変更、画面上でのその方向(運動)、一方では、これら個々のフォルムにおける具象性または抽象性の優位、他方では、大きなフォルム、つまりフォルム群をかたちづくる諸フォルムの配列、個々のフォルムと、画面全体というさらに大きなフォルムをつくるフォルム群との配列、また上述の各部分の協和ならびに対比の諸原理、すなわち、個々のフォルムの調和、あるフォルムの他のフォルムによる抑制、同様に個々のフォルムの転位、集中および分裂。フォルム群の、これと同じような取り扱い。おおいかくされたものと、あらわにされたものとの組み合わせ、律動的なものと非律動的なものとの同一画面での組み合わせ、純幾何学的フォルム(単純な、または複雑な)としての抽象的フォルムと、幾何学上の名称をつけることのできぬ抽象的フォルムとの組み合わせ、フォルム相互の輪郭の組み合わせ(ときには遠く、ときには弱く)の同様な処理等々ーこれらはすべて、純絵画的な対位法の可能性を形づくり、またこのような対位法に役だつと目されるところの諸要素である。」

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