タトリンによる「第3インターナショナル記念塔」

先日訪れた埼玉県立近代美術館で開催中の「インポッシブル・アーキテクチャー」展で、入り口にあったウラジミール・タトリンによる「第3インターナショナル記念塔」に思わず足が止まりました。展覧会の最初の作品にインパクトの強さを感じてしまったわけですが、斜めに立ち上がった鉄塔に自分好みのアートな雰囲気を読み取って、まさに彫刻的なイメージを重ねていました。私は集合彫刻による塔を幾つか作っています。現在作っている「発掘~双景~」も2つの塔が繋がっている作品です。図録によると「《第3インターナショナル記念塔》は、ソビエトの人民教育委員会のメンバーであったアーティスト、ウラジミール・タトリンが構想した革命政府のモニュメントである。~略~ロシア構成主義を代表するこのプランは図面と模型のみで終わったが、興味深いのは、それがピーター・ブリューゲルやギュスターヴ・ドレが描く螺旋形の《バベルの塔》を髣髴とさせなくもないことだ。~略~シンボリックな塔の思想には、時としてそれを崩壊に導く(もしくは実現を阻む)要因があらかじめ装填されているのである。」(建畠晢著)とありました。「第3インターナショナル記念塔」はロシア革命及びロシア・アヴァンギャルドの象徴的プロジェクトでした。鉄製の二重螺旋の内部にはガラスの建造物が4つあり、国際会議が出来る立方体のブロック、行政機関が入る三角錐のブロック、情報センターが入る円柱のブロック、最後にラジオ局の入る半円形のブロックが計画されていたようです。螺旋の構造は地軸の傾きと同じ23.5°あって、それに関する説明が図録にありました。「引力を克服したいという目論見を形態が帯びており、螺旋は解放された人間の運動の軌跡であると解釈している。」引力の克服というのは、言葉を変えれば重力への挑戦として捉えられます。それはまさに彫刻的な考え方であって、それ故に独特な形状に自分が惹かれた由縁かもしれません。日本人の映像作家が「第3インターナショナル記念塔」をロシアの街中に画像処理をして作り上げていました。突如現れた怪物のような構造物に目を見張りました。架空の風景は「インポッシブル・アーキテクチャー」展の本領としての発表に相応しく、その存在感は忘れられない印象を残しました。

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