「発掘~双景~」について

陶彫による新作を作るたびに、私はイメージの源泉を遡って、そこから題名を考えています。題名は制作が進んだ頃に考えるようにしています。私のイメージは言葉ではなく、象徴的で視覚的な風景を伴って現れてきます。20代の頃に地中海に広がる遺跡の数々を見て、その具現化に努めてきましたが、既に当時の記憶も薄れがちで、現在では自分の精神世界に新たな風景を構築している感覚を持っています。古代の出土品のような陶彫の装いは、陶土の配合や化粧土によって叶えられた表現で、もう20年も同じ素材で作っています。これをなかなか捨てきれず、この素材があればこそ展開できる「発掘シリーズ」になっていると言っても過言ではありません。新作は2つの塔が繋がるように配置する集合彫刻で、題名を「発掘~双景~」にしました。最近は題名に「景」の文字を入れています。やや小さめのテーブル彫刻も作り始めますが、ここにも「景」の文字を入れる予定です。自分の中で風景を造形化する意識があって、陶彫による複数の部品を集めて、場としての空間を設定するようにしているのです。集合彫刻は組み合わせの角度を微妙に調整することで、作品の雰囲気が変わります。工房で作りながら組み合わせた時の雰囲気と、ギャラリーで展示する時の雰囲気はまるで違います。そこが面白いところです。陶彫は風雨に当たっても問題がないので、野外でも展示できます。将来は広い野外で陶彫部品を点在させる展示が出来ればなぁと願っているところです。

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