「フォルムと色の統一性に関する困難さ」について

「見えないものを見る カンディンスキー論」(ミシェル・アンリ著 青木研二訳 法政大学出版局)は、実際のカンディンスキーの作品を思い浮かべながら読むと、理解が容易になります。本書は現象学的な視点で書かれた部分も多く、本来は基礎的なものでも論理を積み重ねるうちに、難解な箇所が散見され、理解に苦しむ展開もありますが、基本的にはカンディンスキーが提唱した理論に立ち返る場面があるので、本書の主張するところは何とか読み解けます。本章の「フォルムと色の統一性に関する困難さ」についてもカンディンスキーが提唱したコンポジションの概念が頭にあれば、本章の言わんとするところが分かります。まず描くとは何かという問いかけが冒頭に出てきました。「描くとは、ある色によってあるフォルムをおおいつくすことである。両者が理論的に同じ基調色に結びついているときでさえも、両者を重ねあわせることは、その基調色をかなり変化させるし、それをめだたせ強調して、新たな音色を生み出す。芸術が創造的なのは、そこのところである。」さらにフォルムと色の統一性に関する理論が続きます。最終的にはコンポジションに辿り着くわけですが、それは次章に譲るとして、本章はこんな一文で締め括られていました。「われわれが専念していたのは、諸要素を、より正確には諸要素がもともとの組み合わせー点/基礎平面、直線/曲線、黄/三角形、青/円などーの中で形成している複合的・客観的・情念的な諸統一性をひとつひとつ考察することであったのだから、そうした分析が一体となって構築する有機的な全体性であり絵画そのものにほかならない有機的な全体性であるコンポジションに、まだ向かいあっていたわけではない。」と書かれていました。この文章はコンポジションへの導入と解釈してもいいのでしょうか。この流れでいくと、次章はコンポジションの概念に触れていくようです。

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