AI絵画を巡る雑感
2018年 10月 29日 月曜日
今朝の朝日新聞の「天声人語」は、人工頭脳(AI)が肖像画を描き、その作品が米ニューヨークの競売で4800万円で落札されたことを記事にしておりました。AIがついにここまできたかと思い、どんな絵画なのかネットで調べてみると、黒っぽい画面に輪郭のぼやけた男性が浮かび上がっている、言うなればありきたりな絵画でした。これをAIが描いたとなれば、話は違います。これはパリに拠点をおく芸術集団「オブビアス」が作り出したもので、アルゴリズム(計算手法)により、AIが15000枚の肖像画を取り入れて、その情報を基に描いた作品だそうです。「天声人語」の文章を引用します。「AI画家に欠けるものがあるとすれば、ゴッホが手紙に残したような情念であろう。『どんなにできが悪くっても、人間的なもののなにかを表現している作品をつくりたい』『そこに無限を描くのだ』(木下長宏著『ゴッホ〈自画像〉紀行』)精神の高揚、直感、描く対象への没入…。芸術を芸術たらしめる心の働きは人間だけが持つはずだ。しかし、そんなふうに書きながらも、よぎってしまう疑問がある。本当に?」と最後の文章にありましたが、記者が「本当に?」としたところに私も共感して微妙な気分になりました。AIはどこまでいくのか、人間の特権である創造行為は、たとえ夥しいデータを入力したAIであっても無理な領域ではないのか、それとも私たちも記憶を基に創造行為をしているので、そこまで追いつくことが可能なのか、模倣に模倣を繰り返すうちにAIも新しい世界観を身につけることが出来てしまうのか、ちょっと前までは考えられないようなことが、これから起ころうとしています。ところで私たちが芸術活動の中でしてきた失敗作をAIもするのでしょうか。AIも情念や抒情的感傷を持つのでしょうか。いろいろな仕事がAIに取って代わるという話を聞いていますが、まさか私は芸術家までとは思ってもいないのです。