六本木の「建築の日本展」
2018年 8月 27日 月曜日
先日、1日かけて3ヵ所の展覧会を回り、その最後に訪れたのが六本木ヒルズにある森美術館でした。「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」というテーマで、日本の建築を9つのセクションに分けて、それぞれ分析を試みた大掛かりで野心的な展覧会が開催されていました。私は建築に興味があって、とりわけ現代建築家の活況に注目している一人です。その淵源を探る試みとして、こうした視点で日本文化を考えたことが素晴らしいと思いました。最近の建築展は、展示会場で実物や大きな模型を施工することがあり、千利休が伝えた茶室の実物大再現や、丹下健三自邸の住居模型が目を引きました。図録には4つの論考が掲載されていて、それを読みながら展示品を思い出し、根拠となる背景を考える契機としました。「日本は、木の柱と梁を立体格子状に組み合わせた軸組構造を続け、高度に発達させることに成功し、ヨーロッパ建築の対極となるような平面と構造と表現の3つをもちつづけて、今にいたる。」(論考1藤森照信著)「モダニズムは概念を象徴するものではなく、物の生産に根ざし、人間を変えるよりも行動を原点に、結果的に現れたかのような美に目覚めたものだった。この刷新された形と概念に、日本建築は合っていた。」(論考2倉方俊輔著)「日本の中で体現される多方面にわたるインスピレーションや翻訳、また転換や変換などの流れが、表現の場となる万国博覧会や展覧会、または出版物や実際に建設された建物などの、多くの複数の節目や節点において、明確に表現されている。」(論考3ケン・タダシ・オオシマ著)「絵画や彫刻といった表現媒体を鑑賞者と一定の距離感を保ち展示するのではなく、平面、立体から映像まで多様な媒体の混成により空間をダイナミックに変貌させられるインスタレーション作品は、現代美術展における鑑賞体験の醍醐味となった。ここにしかない場が創られ、鑑賞者に特別な体験を提供している。建築家においても、芸術祭や美術館の展覧会のためにインスタレーション作品を制作する例が増え、美術作品と同様に鑑賞や批評の対象となってきた。」(論考4前田尚武著)以上は4つの論考のまとめではなく、私が気になった箇所を引用させていただきました。