AKARIの展示について

先日、出かけた東京オペラシティ アートギャラリーの「イサム・ノグチー彫刻から身体・庭へー」展。日系アメリカ人の彫刻家イサム・ノグチは、従来の彫刻の概念に囚われないさまざまな表現媒体によって、世界的な評価を得た巨匠です。その中でプロダクト・デザインに属する作品があり、若い頃に一時プロダクト・デザイナーを志したことがある自分は、憧れにも似た気持ちを持っています。私が注目したのは日本の提灯を造形化したAKARIでした。図録によると「照明によるモダン・デザインを考案することを目指していたノグチは、美濃地方の良質な和紙と竹を用いた提灯製作に魅せられた。」とあり、伝統的な岐阜提灯がAKARIの下敷きにあったことが分かりました。1985年の東京での展覧会で、建築家磯崎新が会場を手がけた演出方法が図録に掲載されていました。「桂離宮などからヒントを得た和室や、御影石のスレートを用い水面に見立てたコーナー。AKARIを蚊帳のように布や格子で隠したり、壁にアブストラクトな切り込みを入れて背景にあるAKARIを借景のようにトリミングしたり、意外性に富む展示であった。」(木藤野絵著)AKARIは竹の構造体に和紙を貼り、その中に照明を仕込んだモノで、柔らかな光とフワッとした軽量感に包まれた造形です。西洋的な空間よりも、和室の畳の上に置かれることで、美しい空間を醸し出すと私は思っています。薄暗がりの中に点在する光の揺らぎ。私は幼い頃に近所の祭礼で見た提灯行列を思い出し、「イサム・ノグチー彫刻から身体・庭へー」展の中では、遠い記憶を擽られるような異質な感じを持った一室だなぁと思いました。

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