長寿の芸術家2人を惜しむ

今朝、職場に届いていた新聞によって、版画家・彫刻家の浜田知明氏と石彫家の流政之氏が亡くなったことを知りました。お会いしたことはなかったのですが、2人とも展覧会があれば必ず見に行っていた注目の芸術家でした。浜田知明氏は100歳で他界されたようですが、戦争を題材にした銅版画の連作で知られた人でした。社会風刺や不条理を描くことで象徴化されたきわどい世界観をもち、版画に留まらず、その表現を彫刻にも広げていました。暗いテーマでありながら、どこかユーモラスで、罪を罰しても、人間そのものの生きる力を肯定的に描いていたように感じています。この作家は人間が好きなんだなぁと自分が勝手に思っていたのは、あながち間違いではなかったような気がしています。流政之氏は95歳で他界されました。香川県庵治にあるナガレスタジオに行ってみたいと思いつつ、解放していない個人工房に押し掛けることは失礼だろうと遠慮しました。流政之氏は各地にモニュメントを残した憧れの彫刻家でしたが、石彫の手が切れるような緊張したフォルムに魅力を感じてもいました。流という姓もサムライという海外で命名されたアダナも、どこまでもカッコ良すぎる人だったなぁと思っています。生前お会いしたかった彫刻家の一人でした。浜田知明氏と流政之氏のご冥福をお祈りいたします。

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