彫刻の概念について
2018年 6月 28日 木曜日
彫刻の概念は、明治時代以降に西洋から齎されたもので、欧米型の教育システムで育った私は、義務教育で図工・美術科を学び始めた時から、西洋風の立体概念が学習の対象でした。高校、大学時代を通して西洋彫刻に憧れた私は、日本の仏像や陶磁器にあまり興味がなく、20代前半はヨーロッパの現代彫刻の展覧会があると嬉々として出かけていました。ウィーンの美術アカデミーに在学していた頃に、日本人としてのパーソナリティを意識し始めました。その頃、ウィーンで日本の陶磁器を扱った展覧会があり、その時初めて焼き物の魅力に憑かれてしまったのでした。ざっくりした民芸調の大皿や壺に懐かしい親しみを感じ、土の焼き締めに大らかな造形を見取ったのでした。それが作品の素材に陶を使おうと思った第一歩でした。彫塑を石膏に代えるのではなく、土そのままを焼いて保存する方法が自分には最適と思い至りました。それでも自分に浸透している彫刻の概念で、あらゆる陶磁器を見ていたことに変わりはありません。志向が具象から抽象に移り、ルーマニアで現代彫刻の父であるブランクーシの作品発想の原風景を見た時も、彫刻の概念が形態移行の判断材料になっていました。最近まとまって作品を見る機会があった運慶の仏像でも、そこに彫刻の概念を見ていました。日本の伝統が見直され、博物館や美術館で伝統美を求めた大掛かりな展覧会が企画されていますが、明治時代以降の学校教育で培われた美術の概念を無視することは不可能だろうと思います。私たちは西欧人の視点で、日本美術の良さを味わっているのではないかと思うこの頃です。
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Tags: ウィーン, ルーマニア, 彫刻, 陶
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