映画「ウィンストン・チャーチル」雑感

先日の夜、仕事から帰って夕食を済ませた後、急な思いつきで映画「ウィンストン・チャーチル」に行ってきました。第90回アカデミー賞の主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞の2冠に輝き、しかもメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したのは日本人の辻一弘氏。だからというわけではなく、時代背景に興味関心があった私は、これを是非見たいと願っていたのでした。失策を繰り返し、政界の嫌われ者になっていたチャーチルが「国難だから損な役割を押し付けられたものだ」という台詞がある通り、ナチスの脅威に曝されていた1940年5月にイギリスの首相に就任、そこからチャーチルの苦悩が始まります。初の演説で「私が差し出せるのは、血と労苦と涙、そして汗だけだ。」という台詞が印象的でした。さらに「人類の歴史のなかで、国民が血を流して戦った国家は、たとえ負けても必ず蘇っているが、血を流さないで降服した国家は歴史上から消滅している。」というチャーチルの主張が示す通り、側近から宥和政策を提案されても一蹴し、徹底抗戦を議会や国民に呼びかけるのでした。それには多大な犠牲も伴いました。チャーチルは全6巻からなる回顧録「第二次世界大戦」を1948年に出版し、ノーベル文学賞を獲得しています。ただここに書かれていないドイツとの交渉が模索されていた事実は、1970代になって公開された戦時内閣の閣議記録によって、人々が知るところとなりました。映画で描かれていたチャーチルの苦悩は、こうした資料が基になっているのでしょう。映画ではチャーチルが突如地下鉄に乗って、そこにいた人々の声に耳を傾ける場面がありました。これはフィクションですが、最後の閣議でのチャーチルの演説に説得力を与える演出として、つい身を乗り出してしまうほど面白い効果がありました。辻一弘氏のメイクは俳優をまるで別人に変えていて、しかも自然に肌の下の筋肉が動いて、チャーチルその人になっていました。顔面に接近した撮影もあったにもかかわらず、私はその技量に驚きを隠せませんでした。

関連する投稿

  • 新作完成の5月を振り返る 今日で5月が終わります。今月は個展図録用の写真撮影が昨日あったために、これに間に合わせるために夢中になって制作に明け暮れた1ヶ月だったと言えます。31日間のうち工房に行かなかった日は2日だけで、29 […]
  • 映画「JUNK HEAD」雑感 昨晩、久しぶりに横浜の中心街にあるミニシアターに家内と行きました。レイトショーであるにも関わらず、上演された映画の客の入りは上々だったのではないかと思いました。映画「JUNK […]
  • 創作一本になった4月を振り返る 今日は4月の最終日なので、今月の制作を振り返ってみたいと思います。今月の大きな出来事は、長年続いた教職公務員との二足の草鞋生活にピリオドを打って、創作活動一本になったことです。これは自分の生涯の転機 […]
  • 映画「異端の鳥」雑感 先日、川崎駅前にある映画館TOHOシネマズへ「異端の鳥」を観に行ってきました。本作を私は新聞で知りましたが、上映館が少ないため自宅近くの映画館を探して、しかも深夜の時間帯に行ってきたのでした。家内が […]
  • 映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」雑感 昨晩、家内と横浜市都筑区鴨居にある映画館に、今話題となっているアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観てきました。「新世紀エヴァンゲリオン」は20数年前に社会現象となり、私もそのアニメーション […]

Comments are closed.