横浜の「石内都 肌理と写真」展

昨日、横浜美術館の円形フォーラムで会議がありました。美術館学芸員から企画展の案内があったので、会議終了後、「石内都 肌理と写真」展に立ち寄りました。写真展を見たのは久しぶりで、私は2016年に東京都写真美術館で開催された「杉本博司ロストヒューマン展」を見た以来です。作家の経歴を見ると、石内都氏は美大で染織を学んでいることで、写真の技術偏重にならない表現が、柔軟な思考を齎せているように思えました。作品を見ていると痕跡、記憶、喪失、遺品などというコトバが浮かびました。写真は、そこに人が生きて生活した記憶を残せる媒体として、時間や存在を際立たせることが可能です。あらゆるモノは周囲の状況を纏って、私たちの身近に存在していたんだなぁと思い起こさせるのです。図録の中にある横浜美術館館長の一文を引用いたします。「技術重視へのこだわりが弱い写真への距離感は、三脚を用いず手持ちの35ミリカメラで自然光のもとで撮る石内の撮影方法にも表れているが、被写体との関係性を構築する個人的で親密かつ真摯な対峙の仕方は石内独特のものである。」(逢坂恵理子著)作家自身の言葉も図録に掲載されていたので引用いたします。「今日も又、ひとつの喪失がおとずれた。私をとりまく日常から少なからず人が消えていく。身体を伴って生きることは大変なことのように思える。身体から規制される様々な価値と違和との折り合いをどのようにつけていくのか。いずれカタチ有るものは無くなる。その当事者として残された私は、あるであろう今日の続きの為にも、身体のゆくえをさぐりながら限りある時間を超えて撮り続けていきたい。」

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