六本木の「狩野元信展」

昨日で閉幕した展覧会のことを書くのは躊躇されますが、期間ぎりぎりで飛び込んだ展覧会だったので、ご容赦願えればと思います。狩野派と言えば狩野永徳、そして狩野探幽が有名で、狩野元信は自分には未知の絵師でした。室町時代から400年に亘って天下画工の長として、画壇の頂点に君臨し続けた狩野派は、血縁関係の直系一族だったことが知られています。始祖であった父の正信が将軍足利家の御用絵師に取り立てられ、大きなプロジェクトを任されるに至り、2代目の元信に絵画表現を拡大発展させる土壌を提供したようです。公家や武士と何の所縁もない狩野派が、巨大なパトロンを得て脈々と続いたのは途方もない組織力があったわけで、その組織を築いたのが元信でした。孫の永徳やその孫の探幽といった後世に残る天才絵師に引き継がれていった狩野派の伝統は、元信によって始まったのでした。真・行・草といった「画体」の確立、漢画からやまと絵への幅広い表現拡張、「漢而兼倭」の考えが、元信が主宰する工房によって出来上がってきたと言えます。図録にも「水墨の屏風はひとりで描くのに対して、彩色の場合は絵所による集団制作が想定されていることが分かる。これを考え合わせれば、和を兼ねるようになった元信の制作形態が集団制作、つまり、工房制作であると考えられていた可能性は高い。」(並木誠士著)とありました。個人でも卓抜していた元信は、今回展示されていた「四季花鳥図」を見ても、後世の天才たちと遜色ない表現力を備えていると私は感じました。図録にもその箇所がありました。「『四季花鳥図』に登場する鳥たちの顔や羽を描き出す精緻な線と鮮やかな彩色、硬い岩の輪郭や皺を描出する力強い線、とくに瀧の場面において、目の前に迫ってくるかのような迫力ある松と、音まで聞こえてきそうな瀧の迷いのない線など、個々のモティーフの完成度の高さ、近景から水辺の方へと抜ける視線の誘導の巧みさ、部屋全体のバランスを考え、景物が配置された構図は、元信作品のなかでも群を抜いている。」(池田芙美著)

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