上野の「バベルの塔」展

既に東京で展覧会が終わっている「バベルの塔」展をここで取り上げて大変恐縮ですが、展覧会の会期終了間近に慌てて見に行ったため、感想が後になったことをお許しください。これから「バベルの塔」展は大阪に巡回しますので、大阪に行った折にご覧いただく機会があれば幸いと存じます。自分は今回来日していたブリューゲルやボスの絵画には思い入れが強く、過去のNOTE(ブログ)にも幾度となく取り上げています。20代の頃、ウィーンにいた自分はウィーン美術史美術館で、今回来日していた「バベルの塔」より前に描かれた1563年制作「バベルの塔」を何度も見ていて、印象が目に焼き付いています。オランダのボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館の1968年制作の作品はウィーンのそれより小さいながら極めて緻密に描かれていて、その超絶技巧に目を見張りました。とりわけ東京藝大による3DCGによる建築的解説は、非常に面白く、名画に一層の興味を湧かせる効果がありました。ウィーンの作品と今回来日したロッテルダムにある作品の比較が図録にありましたので引用いたします。「より広く親しまれているのは、1563年に制作されたウィーン美術史美術館の作品であり、画集で目にする機会も遥かに多い。それに比べてボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館の絵は、サイズが小さいうえに基本的にはウィーンの絵の『焼き直し』と捉えられているせいか、知名度の点では後塵を拝しているが、実際には創意を欠いた『縮小再生産』からは程遠い、独自の存在意義を備えた傑作である。大気と光の精妙な描写、明暗のグラデーション(諧調)の豊かさ、そして色彩の鮮やかさの各点において、このロッテルダムの絵は第1作を上回る出来栄えを誇っている。」(高橋達史解説)私はウィーンの絵よりも、さらに完成に近づいたバベルの塔をそこに見取り、さらに深みのある色彩により空間の幅が生まれているように感じました。構築性のあるものが好きな私には、ずっと見ていても見飽きない魅力がありました。

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