新聞掲載の「スラヴ叙事詩」

昨日の神奈川新聞に、現在東京の国立新美術館で開催している「ミュシャ展」に出品されている「スラヴ叙事詩」についての記事が掲載されていました。かなり大きな誌面を割いていましたので、話題の重要度がこれによって分かります。作品を所蔵するチェコ以外では世界初公開ということに加えて、その巨大な連作が類を見ない表現であることが、私自身も実際の作品に触れて納得できました。1980年から5年間オーストリアに暮らしていた私は、近隣国であったハンガリーやルーマニア、当時のユーゴスラビアやチェコスロバキアにもよく出かけていきました。しかしながらチェコスロバキアで「スラヴ叙事詩」を見たことがなく、その存在さえも知りませんでした。当時も農村で繰り広げられる勇壮な伝統舞踊を見るにつけ、私はスラヴ民族に興味を持っていました。同行した紀行作家みやこうせい氏が東欧を転々とし、彼の地に多くいたジプシーを取材していたので、その独特な文化とスラヴ民族との関係に注目していました。今回「スラヴ叙事詩」を見て、強国に蹂躙されていたスラヴ民族の苦難の歴史を知りました。誌面にあった研究員の言葉を含めた箇所を引用いたします。「制作中の写真には、巨大なカンバスに向かうミュシャの姿がぽつんと写る。同館の本橋弥生主任研究員は『どの写真を見ても一人で制作している。助手などはおらず、一人で描き上げたようだ』と言う。完成したのは26年。チェコが独立を果たした10年後だった。『既に独立して10年がたち、ナショナリズムが強過ぎるという意見もあるなど、賛否両論が寄せられた』と本橋主任研究員。~以下略~」現在はチェコが誇る宝物となった「スラヴ叙事詩」。次に鑑賞する機会は本国チェコで出会えるのかなぁと思いつつ、混雑を極めている国立新美術館を後にしました。

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