六本木の「ミュシャ展」

現在、東京六本木の国立新美術館で開催中の「ミュシャ展」は、必ず見に行こうを決めていました。先日、週末で混雑している同展に行ってきました。目的は「スラブ叙事詩」を観ることでしたが、アルフォンス・ミュシャ(現地語でムハ)の力量を余すところなく発揮していた今回の展示内容は、嘗てみたミュシャのどの展覧会よりも満足を覚えました。ミュシャは1860年オーストリア領モラヴィア(現チェコ)で生まれ、パリに渡って時代の寵児として活躍した画家です。大女優サラ・ベルナールの流麗なポスターを描いたことで一躍有名になり、その後はアール・ヌーボーを代表する装飾画家になっていきました。今回の展覧会では「スラヴ叙事詩」以外でも極めて優れた作品が多く、幾何学的な装飾文様に植物を配置したミュシャ独特な様式を改めて見て、その構図の取り方に快さを感じました。その装飾性は超絶技巧と呼んでもいいように思えます。プラハ市民会館の内部壁画や切手から紙幣までのデザインを手がけるミュシャは、まさに国民的画家であり、人物描写は劇画的な要素もあるように私は感じました。ミュシャの人物像が現代のキャラクターデザインに繋がると感じたのは私だけでしょうか。19世紀末から20世紀初頭の激動の時代に華やかなデザイナーとして異国で地位を固め、2つの世界大戦の狭間でスラブ民族の歴史的遺産を表現する国民的画家となったミュシャ(ムハ)。私が訪れた1980年代のチェコスロバキアでは、「スラヴ叙事詩」を観る機会はありませんでした。その存在を知ったのは帰国後のことでした。近々NOTE(ブログ)に「スラヴ叙事詩」について書いてみたいと思います。

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