朧気な次作のイメージ

陶彫部品を組み合わせて集合彫刻を作っている自分には、陶彫部品を点在させて場の空間を創出するイメージがつき纏います。集合があるなら拡散があってもいいのではないかと思うところです。次作のイメージは拡散による空間です。先日訪れた「イサムノグチ庭園美術館」で見た「石壁サークル」は、たとえ作者本人は個体を作っていたとしても、鑑賞する私は全体の宇宙観を感じていました。個体と個体が響き合う空間は刺激的で、心象風景を見ているようでした。亡父が施工していた日本庭園も拡散による空間解釈と言えます。石の置き方や植栽によって、疑似自然なる小宇宙が広がっていると思われます。私たち日本人はそこに情緒を感じたり、絶景を見て取ったりします。時に簡潔なる美も見ています。これは象徴化された世界で、私は庭園も広い意味での彫刻に含まれると思っています。次作のイメージは陶彫による庭園です。私は中学生の頃から亡父の手伝いをしていました。当時は嫌だった石や植木の運搬や設置は、ずっと私の頭に残ることになって、そののちに出会う彫刻と庭園が空間概念として結びついたのでした。それもイサムノグチの影響があったと言えます。日本人として見慣れた風景も日系アメリカ人彫刻家の眼を通すと新鮮な造形表現として脚光を浴び、またそれを知って庭園を再度見直すことになったのでした。まだイメージは朧気な状況に過ぎませんが、次第に具体的なものが見えてくるのではないかと思います。

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