今年印象に残った展覧会

2016年の晦日になりました。明日は今年全般に亘るまとめをNOTE(ブログ)に書くつもりですが、今日は印象に残った展覧会を取上げます。まず西洋の美術展では東京六本木の国立新美術館の「ダリ展」と東京上野の西洋美術館の「クラーナハ展」でした。いずれも大規模な展覧会で来客数も多く、また見応えのある作品が来日していました。ダリの超現実的な風景や人物が配置された世界に、私は自己陶酔欲とも言える甘美な雰囲気を感じていました。一方、クラーナハは北方ルネサンスの独特なフォルムをもつヌードに魅了されてしまいました。私は若い頃、ウィーンに5年間滞在していたため、クラーナハに親しみを感じていました。日本でクラーナハを通じて当時の思い出が甦ったことが印象に残った個人的な事情でした。東洋の美術展では東京都美術館の「若冲展」と根津美術館の「円山応挙展」を挙げておきたいと思います。若冲は対象を象徴化して細部に至るまで丹念に描いた画家でした。全体構成力が見事で煌くような色彩が私の眼前で舞っていました。「若冲展」は大変な混雑ぶりで人を押しのけて鑑賞する有様でした。どうして若冲にこんなに人気が出たのか、またはマスコミの力によるものか見当がつかない状況でした。円山応挙は西洋画風の写実と東洋画風の運筆を巧みに組み合わせた達人で、冴え渡る筆の勢いが見事でした。本番では一点の迷いがないほど突き詰めた描写は、実は用意周到なスケッチに支えられていたことがわかって溜息が出ました。研鑽を積むことが名作を生むという当たり前な事実が、改めて示された質の高い展覧会だったと思っています。来年も多くの展覧会を見て歩き、自分の創作の糧にしたいと思っています。

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