横須賀の「新宮晋 宇宙船」展
2016年 11月 21日 月曜日
先日、横須賀美術館で開催中の「新宮晋 宇宙船」展を見てきました。彫刻家新宮晋氏は、風や水によって動く彫刻を作る作家として内外に知られています。とくに自然現象を扱うために作品は野外に設置される場合が多く、私も駅の広場や公園で悠々と動く新宮氏の作品を拝見してきました。作品はメカニックな構造を持つものが多いのですが、動力は風や水によるので、電動装置のような決まった動きはなく、気儘に不規則に動きます。そこが見ていて飽きない新宮ワールドの醍醐味だと思っています。展覧会の会場では、まず水が天井から降り注ぐ部屋がありました。タイトルは「雨の光線」、奥に「小さな惑星」。日本古来の鹿威しの現代版とも言えるステンレスの彫刻で、水を受けてクルクル回る楽しさに思わず見とれてしまいました。次に私が注目したのが「風」というタイトルのついた集合彫刻で、床から少し離れた場所に矩形の同じサイズの板が数多く設置され、それが風を受けてさざ波のようにハタハタと波打つ様子を見ていると、暫し時間を忘れて心に安らぎを与えてくれました。図録に哲学者梅原猛氏が一文を寄せています。抜粋して掲載します。「新宮晋の芸術には日本文化の思想の原理が含まれていると思う。それは『草木国土悉皆成仏』という鎌倉時代以降の日本の宗教や芸術を特色づける理念であり、一木一草にいたるまで神仏が宿っているという意味である。そしてそれは自然征服を原理とする西洋の自然観とはまったく反対の思想であり、そのような思想が人類共通の思想にならなければ、今の人類の文明は遠からず滅びざるを得ないと私は考える。」図録も他の展覧会に見られないような工夫がありました。彫刻の展覧会は撮影された写真が中心になるのが定番ですが、これは彫刻のデッサンや図形が中心になった図録で、返ってコンセプトが伝わってきて、この方法もいいなぁと思いました。