職業人と表現者との隔たり

職業とは社会のメカニズムの中でその役割を演じているに過ぎないのではないか、私は常日頃から己の存在を問うことを試みていて、その存在そのものと職業人としての私の間に隔たりがあるような気がしてなりません。職業は私に鎧を着させて、メカニズムの中で有用に動くことを強いています。それは現状の私の立ち位置からすれば、決して苦しいものではなく、枠の中で既存の概念から外れないように注意すれば、動き方のマニュアルが見えてきて、とても楽なものになっていきます。有り難いことに現在の職場では私に親密で協力的な組織があって、それをもって私が圧迫を感じない要因だろうと思います。マニュアルもある程度確立されているので、責任ある立場であっても、こんな私が職業人としてやっていけるのだと思っています。ここでいう私の存在は組織の存在であって、対外的な鎧を纏う感覚が隅々にまで浸透しています。それに比べて個を主張する自己存在への問いかけは孤軍奮闘であって、明らかに職業人としての私とのズレが生じています。我に返ることは決して楽なことではないという認識を私は持っています。創作活動が趣味の域を超えているせいかもしれません。表現者としての自分がそのまま職業人として社会的認知がされている幸福な場合なら、こんなズレを考える必要はないでしょう。残念ながらいくつになっても私は自己表現では食べていけず、アマチュア的活動に甘んじながら、それでも精神性をもってプロフェッショナルを凌駕する存在でありたいと願っているのです。職業人と表現者との隔たりは一生私に付き纏うものでしょう。

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