バリ島 20年前の記憶を辿って…②

昨日からバリ島のクタにいます。今日は現地ガイドではなく、私たち2人でクタの街を散策することにしました。20年前もここを散策していますが、街の様子が当時とは違い、新しい街にやって来た感覚です。まずクタビーチを見に行きましたが、渚のリゾートとして多くの観光客が海水浴を楽しんでいました。モダンなレストランが増えてハイセンスなビーチに生まれ変わった感じがしました。オーストラリア人は長期滞在して休暇を満喫している人が多く、水着で砂浜を闊歩している彼らを見ると羨ましい限りです。何のために働くのか、それは休暇を楽しむためだと、滞欧時代に友人が言っていました。留学生だった20代にそれを聞いて、仕事をするとはそういうものかと思っていましたが、今まさにその気分です。それでも彼らほど長く休めない自分は、仕事とは何かを改めて自問自答しています。クタは20年前とすっかり雰囲気が異なっていましたが、ビーチの内陸に入った賑やかな通りには、多少記憶を留めている店がありました。当時も今も土産物店が多いのは同じですが、エステやタトゥーを入れる店が増えていました。かつて雑貨と言うよりアートに近い作品を売っている店があり、そこが気に入って仮面やら布を購入してきました。今でもその作品は自宅を飾っていますが、そんな店があればと期待していました。当時の店ではなく、洒落た雑貨を扱う店があったので、家内が服や小物を購入しました。通りには爆破テロ慰霊碑がありました。2002年にここでテロがあったのをテレビで見ていました。楽園にもテロがあるんだとその時思い知りました。インドネシアはイスラム教徒が多く住んでいます。テロ行為を起こす連中は、真のイスラム教徒ではないと現地ガイドが強い口調で言っていました。確かに街の人々は穏やかで、厳正な礼拝を欠かせません。殺人を奨励する宗教指導者がどこにいるでしょうか。海外に行くにもテロを心配するようになりました。自分が見たい古代遺跡は、テロが多発する国にあり、そのうちいくつかの遺跡は破壊されてしまいました。自然遺産も文化遺産も幾星霜に亘って継承されてきたもので、それは人類の知的財産でもあると自分は思っています。過去の記録を通じて未来を考えるのは、分野が異なれど全てに共通するものです。自分がやっている彫刻もまた古代遺跡から示唆されるもので、そのために自分はアジアの世界遺産を巡っているのです。そんなことを思いながら、夕方デンパサール空港に到着しました。

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