旧作からのヒント

現在は新作を始めて間もない時期ですが、今回の作品は旧作からヒントを得て、イメージを膨らませた作品になりそうです。10年前、2回目の個展に出品した「発掘~円墳~」と「発掘~地下遺構~」はテーブル状の彫刻作品でした。今思い返すと旧作2点はまだ整理が出来ていない部分があって、造形要素が多すぎる傾向が見られます。集合彫刻の陥りやすいところですが、さまざまな要素が盛り込まれているため、旧作を振り返り、その中から選んだひとつの要素を発展させていくことで新しい作品を生み出せるのではないかと思うところです。今回は要素のひとつから新作のイメージを掴みました。作品は作り続けていくと、思考が先鋭化していき、無駄なカタチが剥ぎ取られていくように思えます。贅肉を削り取ったカタチは美しいと感じています。そんな思いを抱きつつ新作の陶彫部品の制作に精を出しています。このところ職場の閉庁期間を利用して毎日工房に通っています。猛暑で作業をするだけでも汗が流れてきますが、ひとつイメージが決まれば、意欲に駆られて暫し暑さを忘れる瞬間があるのです。創作の呪縛が始まったと言っても過言ではありません。まだ具現化されていない新作を頭で思い描くことは何にも増して楽しいのです。その楽しさだけが自分を支えていると思っています。彫刻は日常で役に立たないモノですが、彫刻に限らず非日常なモノは自分の心を豊かにします。人が休暇を取り、さまざまな体験しようとするのも、非日常を求めてストレスを解消するためだと言えます。その究極が創作活動で、自らの中から非日常を創出することは至福の喜びです。周囲の人からすれば趣味とも遊びとも捉えられる行為ですが、自分にとって創作活動は精神のバランスをとる重要な行為なのです。

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