芸術と社会との関わり

国際規模のトリエンナーレ等を見ていると、人間社会がもつさまざまな課題に向き合っている作品が目立ちます。それは一昔前からあって、街路に出て行ってパフォーマンスをしたグループに、芸術至上主義を否定した脱芸術としての行動があり、当時は社会問題化もしていました。美意識が広がり、芸術は絵画や彫刻、工芸という括りの中では語れないものになっています。芸術行為は価値転換を図る思索の産物であり、それを鑑賞者に提示してみせることが現在も続いています。現代アートは新しいものを創りだすことではなく、新しい価値観を見いだすことなのかもしれません。社会と自分の表現をどう関わらせるか、その視点を持つことが現代アートとして認められるかどうかを判断できるのではないかと考えます。現代作られているものは全て現代アートといった開き直った意見もありますが、自己完結をしてしまう旧態依然とした表現と、社会に対して明確な主張をする表現とは、かなり隔たりがあると思います。翻って自分の表現はどうなのか、自問自答するところですが、陶彫を媒体にしていることで自然環境の中に出ていって、他者との関わりを演出できる契機を内蔵していると自負しています。今はギャラリー空間の中で、自己完結しているように見えますが、さまざまな展開は充分に可能です。今後も社会との関わりを考えた作品を作っていきたいと思っています。

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