「幻想の未来」まとめ①

「宗教論ー幻想の未来」(フロイト著 吉田正己訳 日本教文社)を読み終えました。中編くらいの論文なので、まとめを2回に分けたいと思います。フロイトが「幻想の未来」を書き始めようした動機が、最初の文章に綴られていました。「特定の文化のなかに相当の期間にわたって生活してきて、その文化の起源をさぐり、過去における発展の経路を跡づけようとつとめたことのある者なら、だれしも一度は、別の方向に目を転じて、この文化の未来に待ちうけている運命や、それがこうむらざるをえない変化を問題としてみたくなるものである。」これは精神分析学者フロイトによる総括的文化論です。ここでいう文化とは何か、その定義を捉えてみる必要があります。文化の側面をフロイトは次のように語っています。「文化は一方で、人間が自然の諸力を支配して、その財物を自分の欲求の充足に供するために獲得したあらゆる知識と能力を包括しており、他方では、人間相互の関係、とくに入手可能な財物の分配を調整するために不可欠な制度すべてを含んでいる。」人間は共同生活を可能にするために、文化によって要求される犠牲を、重圧のように感じるものだともフロイトは述べています。次に文化は社会的な機構や制度であって、この諸形式は不完全なもので、それを補う何かが必要になってくるという導入論理が登場してきます。それが宗教というわけです。ここから総括的文化論のなかで宗教に特化した理論が展開していきます。「道徳的なものが、ますます神々の本来の領域になるのである。いまや神々の任務は、文化の欠陥や損害をとりのぞくことであり、共同生活において人間が相互に加えあっている苦痛に気をつけることであり、また、人間があまりよく守らぬ文化の制約の実践を監視することである。文化の制約そのものは、神々に由来されるものとされ、人間社会をこえて適用されて、自然および宇宙現象にまで範囲をひろげるのである。」まとめ①は、ここまでにします。宗教と人間との関わりがまとめ②では刺激的な展開を見せますが、後日に回したいと思います。

関連する投稿

  • 「中空の彫刻」読後感 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]
  • 「《逸楽の家》」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第6章 タヒチからマルケーサスへ(1895~1903年)」の「3 […]
  • 「結語」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「結語」の「1 木彫と陶器」「2 親密な環境における彫刻」「3 […]
  • 「状況-思考の神秘的内部を表すこと」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第6章 タヒチからマルケーサスへ(1895~1903年)」の「1 […]
  • 「文化的総合」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第6章 タヒチからマルケーサスへ(1895~1903年)」の「2 […]

Comments are closed.