「村上隆の五百羅漢図展」雑感

先日、勤務時間終了後に東京六本木ヒルズまで出かけていき、森美術館で開催中の「村上隆の五百羅漢図展」を見てきました。相原工房に出入りしている若いスタッフがアルバイトで五百羅漢図制作に関わったことが、村上ワールドを身近に感じさせた要因で、自分も国際舞台で活躍する芸術家の作品を一度実物で堪能してみようと思ったのでした。派手な色彩と華美な装飾に彩られた巨大な平面作品を見ると、パワフルでユーモア溢れる独特な世界観が立ち現れていて、天を突き破るような面白さがありました。図録によると伝統美術の中で村上隆は「奇想の系譜に自らを位置づける」ことをしたのであり、「日本の伝統絵画からアニメなどのおたく文化まで、日本美術の視覚表現に通じる平面性を、階級のない戦後日本の文化的在りようや社会学的文脈とも連関させながら概念化した、よく知られる『スーパーフラット』論」を展開したのでした。作品のもつ壮大な雰囲気を感じとりつつ、世代の近い制作者の一人として私は、各作品にかける労力の凄さや厳しさを同時に感じとってしまいました。「全国の美大から参加希望者を募り、スタジオスタッフと合わせて200人以上が24時間態勢で制作にあたった。」と図録にある通り、工房システムを活用し、短期間で完成させるプロジェクトは、現代のルーベンスのようであり、個人でコツコツ作品を作っている私に比べれば、会社組織を作って大々的に創作を展開するパフォーマンスに羨ましさを感じずにはいられません。芸術で起業できた一握りの造形作家、そんなことも展覧会を見て頭を過ぎっていきました。

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