戦争とは何かを考える

先月観に行った映画「顔のないヒトラーたち」に絡めて、今日は戦争について取り上げます。私は職場にある複数の新聞には必ず目を通し、気になる記事をスクラップしています。9月17日付の朝日新聞の記事に「野火」の映画監督である塚本晋也氏のインタビューが掲載されていました。「戦争を描くなら、加害者の目線で描かなければならないと、ずっと思っていました。~略~(元日本兵が)捕虜をやりで突けと言われ、やりたくないと思いながらドーンと突いた瞬間、腹のあたりに今まで感じたことのない、ある充実した手応えを感じた、そこから殺すことが平気になって~略~加害の記憶は、多くの方が口をつぐんだまま亡くなられるので、なかなか継承されません。」という記事は、まさに塚本監督が「野火」制作へ踏み切った動機ではないかと思いました。「ヒロイズムで戦争をとらえるのは間違いだと、はっきり言えます。」という言葉に、戦争のもつ現実の痛みを実感しようとする塚本監督の思いが込められています。戦争に遭遇した人間の本質はどこにあるのか、多く作られている戦争映画の構造に、現実の戦争に対する違和感はないのか、そんなことも考えさせる言葉がありました。「敵を仕立て、それを怪物のように描き、これだけ被害を受けたのだから仕方ない、大切なものを守るために名誉をかけて闘う、そして苦戦の末に勝利する。そういうハリウッド映画が、子どものころから大嫌いでした。~略~『これが正義だ』と教えられて人を殺してしまったとしても、それを正義だと言い切れない正気の目線が、頭の上の方で常に自分を見ているはずです。」私は橫浜のミニシアターで夏に「野火」を観ていたので、インタビューの言葉を重く受け取りました。先月観た「顔のないヒトラーたち」も加害者側から戦争を描いた秀作でした。戦争とは何かを考える意味で、最近の映画の内容に真摯なものを抉り出そうとする傾向が見られることを、自分は歓迎している一人です。

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