「夢解釈」上巻のまとめ

「夢解釈」(フロイト著 金関猛訳 中央公論新社)上巻を読み終えました。フロイトは生前から精神分析に対し多大な影響を持つ学者でしたが、そうした時代の精神分析運動の組織とは別に、本書はフロイト個人が一人の学者として粘り強く取り組んだ書籍です。第一章では夢の問題に関する科学的文献を扱い、他の学者の提唱した理論を基に、そもそも夢とは何かという分析を試みました。第二章ではフロイト自身の夢を考察し、第三章の夢は欲望充足であることへ繋げました。第四章での夢の歪曲を述べた後、第五章の夢の素材と源泉の中で、夢と幼児期体験の関連を論じていました。最後の類型夢分析の中で、人間の原初的な欲求に触れ、伝説の世界でそのことに対する教育的抑圧が述べられているところで上巻が終わりました。上巻の最終箇所を引用します。「オイディプス王はいわゆる運命悲劇である。その悲劇の効果は圧倒的な神々の意思と、災いに脅かされる人間の無益な抗いとの対立に基づくと言われる。深い衝撃を受けた観衆がこの悲劇から学ぶべきは、神の意志を甘受し、自らの無力を洞察することだけだという。」「最初の性的興奮を母親に、最初の憎悪と暴力的な欲望を父親に向けることが、もしかすると私たちすべての宿命であるのかもしれない。私たちは自分の見る夢からそのことを確信する。」「私は、夢理論に対してそうした類型夢がそもそもどういった意味をもつかについてさらに数語費やし、これを明らかにせねばならない。私たちがこれらの夢に見いだすのは、抑圧を被った欲望によって形成された夢の想念があらゆる検閲をすり抜け、無変化のまま夢に入り込むというそうとう異常なケースである。」続きは下巻によってさらに奥深い考察があるようで、さらなる深化を期待して「夢解釈」の後半に入っていきたいと思います。

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