旅と旅行に関する私見

家内が「どこかへ旅行するというと辛さを覚える」と言うので、「何故?」と聞くと、若い頃に滞欧生活を引き上げる際、バスを乗り継ぎながらトルコやギリシャを数ヶ月かけて旅したこと、そればかりではなくヒッチハイクをしながら西欧諸国を巡ったことを思い出すからという返答がありました。ルーマニアを初めとする東欧諸国にも行って、ウクライナ(当時はソビエト連合)の国境近くを練り歩いたこともありました。若い頃の無謀な旅に、貴重な経験も確かにありましたが、やはりこの年齢になると、安全安心で気楽なお任せ旅行を良しとする心境に変わります。「どこかへ旅行するというと辛さを覚える」ことを感じるのは、当時の自力で巡る旅が、現在でも頭の隅にあって、それがトラウマのようになっているせいかもしれません。帰国して数年が経ち、インドネシアのバリ島にツアーで出かけたことがありました。その時の気楽さは今でも忘れません。こんなに外国旅行が楽しいものだったなんて、本当に眼から鱗でした。昨年もカンボジアのアンコール遺跡群にツアーで出かけました。これも面倒なことは全てお任せで、楽しいところだけを満喫できた旅行でした。今年もツアーに申し込んで海外を楽しみたいと思っています。日本語には旅と旅行という2つの語彙があります。旅と旅行は同じコトバでも意味するところが違うと私は考えます。旅は自力で行く地域密着型の出会いを求めるもの、旅行は企画に乗って恰も映像でも見るかのように休暇を楽しむもの、そんな考えで旅と旅行を使い分けていければと思っています。そのどちらの要素も微妙に絡む半旅・半旅行もあるでしょう。自分が何を求めるかで、旅的要素なのか、旅行的要素なのか、どちらにウエイトを占めるのがその時の自分にとって有効なのか、そんなことも考えながら計画を立てるのも一興かもしれません。

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