造形意欲を刺激する仮面

東京都庭園美術館はアール・デコ建築による独特な雰囲気を持つ美術館ですが、同館で開催している「マスク展」は如何なものだろうと思って、先日同館に出かけました。自分は昔から仮面が大好きで、その民族が有する原初的で生命感溢れる表現に、自分の創作意欲が刺激されてきました。とりわけアフリカの黒い木彫の仮面に強く惹かれます。20世紀初頭にピカソを初めとする多くの芸術家を魅了してきたアフリカ系プリミティヴ・アート。そこに新しいダイナミズムと美的価値を見いだした当時の芸術家に改めて感謝です。図録で気になったコトバを拾ってみます。「美術館で展示される仮面は、文化的な栄養分を絶たれてしまったという意味で、もはやもとの仮面とは似ても似つかぬものであるのかもしれない。けれども外部の世界からやってきた仮面を目の当たりにすると、見る側は多少なりとも混乱に陥る。この瞬間、展示室の壁は期せずして、西洋と非西洋、自文化と他文化というたがいに異なる世界が出会う界面になっている。その界面の上で、仮面はおそらく、ふたつの世界をつないで橋渡しをしているのである。(川口幸也氏著)」「ピカソがアフリカの仮面に注目した一方で、ブルトンは、特にオセアニアの仮面に対する賛辞を惜しまなかった。~略~パプアニューギニアの住民にとっては、~略~自然との逢瀬における存在のダイナミズムにおいて、異次元の〈境界〉を行き来することとは、彼等にとって実に容易い仕草であったに違いない。ブルトンはそこにこそ、シュルレアリスムが指向した痙攣すべき美の世界を認めていたのではなかったか。(神保京子氏著)」芸術家の造形意欲を刺激し続ける仮面群。アール・デコ建築とも相性の合う仮面群。美術館を後にした自分は精神的な充実を得られました。

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