「アーティストが愛した猫」を眺めながら…

ピカソが縞のシャツを着て大きな猫を抱いている写真が表紙の「アーティストが愛した猫」(アリソン・ナスタシ著 関根光宏訳 エクスナレッジ)を毎日眺めています。古今東西の芸術家は猫派か犬派か、どちらが多いのかを統計したら面白い企画になるのではないかと思います。その理由を真面目に分析したら、芸術家の嗜好と思考がわかるのではないかとも思うのです。「はじめに」と題された文章に芸術家と猫の関わりが、心理学や古代史を通して書かれていますが、さらに進んだ学術的分析は可能でしょうか。師匠の池田宗弘先生は究極の猫派です。それに習って自分も猫派になりました。自分は幼い頃から実家で猫を飼っていて、何故か猫族に昔から好かれるのです。子どもの頃、自分は猫に虐待と見紛うくらいの悪戯をしましたが、猫はそれでも私に恐る恐る近づいてきたのでした。現在は野良猫だった茶虎のトラ吉を飼っています。過去に犯した罪滅ぼしに今のトラ吉を可愛がるようにしています。猫は悠々として威厳たっぷりな足取りでいて、何を考えているかわからない素振りで人に接します。「我が輩」と猫が自称している小説を書いた夏目漱石の観察眼は凄いなぁと思います。トラ吉も喋ることができれば、自分のことを我が輩と言うでしょう。人に媚びないところが芸術家に好かれる所以かもしれません。人相ならぬ猫相が哲学者のそれに似て偉そうです。パイプを銜えさせたら似合うと思いながら、トラ吉と毎晩同じ仕草で戯れ、あたかもニーチェの永劫回帰のような繰り返しに、よくも猫は飽きないものだと感心しています。

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