木版画を懐かしむ

山梨県のワイン会社の新作ワインにつけるラベルを制作中です。何とか時間を捻出して木版画でやっています。切り出し刀でラインに沿って彫り込みを入れていくと、若い頃が思い出されます。当時の自分の頭には、K・コルヴィッツやR・キルヒナーのドイツ表現主義の画家たちが作っていた木版画がありました。それは浮世絵の彫り師のような丁寧な彫り方ではなく、彫り傷や彫り跡を敢えて残して、そこに不安定で不穏な世相を反映させる意図があったように思いました。現在自分がやっている木版画は丁寧な仕上げを考えています。19世紀末に西欧で興ったアール・ヌーボー様式を取り入れています。自分はやはり版画が大好きで、彫りに挑んでいると時間が経つのを忘れます。象徴的な世界が創出されてくると、それをどんどん発展させて連作にしたくなります。今のところは時間もないし、依頼されたラベルだけで我慢していますが、そのうち版画の再開はきっとあるだろうと思います。工房には未だ使っていないエッチングプレス機が眠っています。銅版画も制作可能なわけですから、自分が版画の世界にますます魅了されるのは時間の問題でしょう。

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